バイAPAにも動きが…

国税庁「移転価格事務運営要領」の一部改正を2月23日に公表しました。

内容は、相互協議を伴う事前確認について、国外関連者が所在する国等の税務当局で事前確認の申出が収受されず3年を経過した場合、

①事前確認の申出の取下げを行う

または

②相互協議を伴わない事前確認に変更するかの聴取が行われる

というものです。

 

この改正は、中国やインドネシアなどのOECD非加盟国の新興国が相手国の場合のバイラテラルAPAに対して次の現状が生じていることに対しての改正だと思われます。

  • 国税庁                                  1)中国等の新興国とのバイラテラルAPAが遅々として進まず、繰越件数が積み   あがってしまっている。                         2)事前確認制度について、将来年度における移転価格税制の適用に係る法人の予測可能性の確保等が目的であるとしたうえで「専ら相互協議の相手国の事情により事前確認の手続きが確定しない状況を無制限に放置することは、事前確認の趣旨に反するものと考える」としている。
  • 確認申出法人(納税者)                          確認対象事業年度は移転価格調査を行わないこととされている(指針3-22(3))ことを利用して「とりあえずバイラテラルAPAを申請して調査を回避しよう」という思惑を有する納税者が出てきたこと。

改正では、バイAPAの申出について、国外関連者が所在する国又は地域の税務当局に対し行った申出が“収受されていないもの”と認められ、かつ、“確認対象事業年度(事前確認を受けようとする事業年度)のうち最初の事業年度の開始の日の翌日から3年を経過”した場合には,確認申出法人(納税者)から①事前確認の申出を取り下げるか否か、②相互協議を伴わない事前確認(ユニラテラルAPA)を求めるか否かを聴取するとしました(指針6-15(2)ロ)。

 

納税者としては、次のような選択肢になるのではないでしょうか。

  • 日本側で移転価格リスクがある場合(国外関連者の利益率が高くなっているような場合)
   →ユニラテラルAPAに切り替えて国税当局の審査を受ける。
  • 国外関連者側に移転価格リスクがある場合(国外関連者の利益率が高くなっているような場合
   →日本側で取り下げ、相手国側で国外関連者が現地当局にユニラテラルAPAを申 
    請。
    
   しかし、そもそも相手国(中国等)側の審査が進まなかったので、3年を経過 
   することになってしまっているので、ユニラテラルAPAに切り替えたところで  
   解決しないリスクが想定されますよね。

 

一方で、最近の中国当局はバイラテラルAPAに対してポジティブな姿勢をみせているということも聞こえてきますので、3年以内にバイラテラルAPAが終了するようになってくるのではないかと期待しています。